2007年07月13日
感じの悪い女
事務所の電話が鳴る。私は「はい」と答える。
ここは事務所でもあるが室井親子の住居でもあるから、「室井事務所です」というのは防犯上どうかと思い名乗らない。
実際、数カ月前には夜中や早朝に無言電話が何10回もかかってきたことがあったしな。
ある日、事務所にいると電話が鳴りいつものように「はい」と出た。
女王様の仕事依頼の電話だった。
「室井先生の事務所ですか」
「はい、そうです」
「私、●●という雑誌の××と申します。今度私どもの雑誌でインタビューをお願いしたいのですがーー(略)」
「わかりました。では、締め切りや内容の詳細をファックスで送ってください。検討させていただきまして、後日ご連絡します」
そう言って電話を切った。いつもの通り。
しかしそれを聞いていた女王様がポツリとつぶやいた。
「なんか感じワルーい」
「えええーーー? なんで、今の感じ悪かった?」
「うん、だって早口で、早く電話を切りたいって感じ」
「ウッソー。それじゃあ、秘書として失格じゃん」
「そう」
「今だけ? 今の電話だけ? なにが悪いの? もっとゆっくり喋った方が言いのか?」
「いや、いつも感じが悪いと思ってた」
「早く言ってよ!」
本気でショックを受けた。これまで私は“感じのよさ”だけで世の中を渡ってきたと思ってきた。『噂の真相』でスキャンダル取材をする時も、きちんと礼儀正しく、時には相手にへりくだってネタをとってきた。
室井の秘書になってからは尚更だ。一緒にご飯を食べにいっても女王様の印象が悪くならないように気を使ってきたつもりだ。
女王様の仕事関係者にも、友人にも“感じよく”振舞ってきた。振舞うっていうか、私は元々、生まれつき、ずっと感じがいい人間だと自負してきた。
以上のように、女王様に私がいかに感じがいい人間かと熱弁を振るった。
「間違ってる」
「室井と2人で喋っている時は?」
「普通に感じ悪い」
そういえば、女王様関係の友人2人とこんな会話を交わしたことを思い出した。
私「室井の回りの女ってみんな偉そうだよね、訳もなく」
友人「この歳まで(大体30代中盤から40代前半)仕事をしてるんだから、少しは強くなくっちゃやってられない。そうではない優しそうな女は仕事を辞めて家庭に入っていたりするものさ」
私「そうか、そういえば、●ちゃんも×さんも(そこにいた友人)も偉そうだよね」
友人「お前にいわれたくない!! 一番エバっているくせに」
私「ぐえぇぇxxxxx、ウッソーーー!?」
今回のことといいダブルショックだ。
これまで自分はずーっと感じがいいと思っていきた私はなんだったんだろう。
でも事務所での電話の応対については反論がある。
高層マンションのため携帯電話の電波が極端に悪い。そのため、一刻も早く用件を聞かないと途中でブチ切れるのだ。そのため早口になる習性がついてしまった。
もうひとつ。私が電話していると、時折隣で、いや耳元で怒鳴るヤツがいる。
もちろんあいつのことだ。室井。
「ちょっと、なに長電話してんの!」
「ちょっと、ちょっと、ちょっと!! なんであたしの話を聞かないの!!」
あのー、女王様のお仕事に関する電話の最中なんですけど‥‥。
それだけではない。ヤツは面白そうな話をしていると私から受話器を奪い取ろうとさえする。
こんな恐ろしい環境のため、どうしても早口になったり、早く電話を切ろうとする傾向があるのかも。
でも大丈夫。この一件から私の電話の対応は変わった。
1オクターブ声を高くして、ものすごく親切な受け答えをしている。
私が電話をしている時、話かけないようにと女王様にもきつく言った。
是非、お仕事の電話をください。今ならもの凄く、感じのいい人になってるーーはず。