2007年10月23日
とんでもない話
ジャーナリスト・草薙厚子さんの著書「僕はパパを殺すことに決めた」を巡って、関係者への事情聴取や家宅捜索が続いていたが、10日14日、遂に草薙さんの取材源とされる医師が逮捕される事態となった。
この著書は奈良で起きた少年による放火事件に関し、少年などの供述調書をもとに描いたノンフィクションだ。少年が父親に殺意を抱き自宅に放火。結果、少年の義母と弟妹が焼死するというショッキングな事件の背景を、少年の育成歴や供述調書を元にあぶりだしている。
しかし、この少年らの調書が「少年の精神鑑定を行った医師から流失したもの」として、該当医師が情報漏えいの容疑で逮捕されてしまった。
まったくとんでもない話だ。
私もこの著書が発売されてすぐに読んだ。私自身が買ったのではない。女王様が買い求めた本を借りて読んだのだ。
女王様がこの本を買った理由は「息子に殺されないため」らしい。
放火殺人という異常な事件を起こした少年の背景、成育歴を知りたい。少年はどんな育ち方をしたのか。親や友人とはどんな関係にあったのか。この少年はこれほどの事件を起こすほど特別だったのか、それともーー。
これは重大な少年事件が起こるたび、世の親なら思うことだと思う。
親だけではなく、私たちにとっても同様だ。
もちろん関係者のプライバシーへの配慮は必要だし、またこの著書において調書の扱い方をもう少し考慮すればとも思った。少年法に対する議論にも配慮すべきだろう。
しかし情報源に対する強制捜査という事態は問題が違う。
それは筆者である草薙さんではなく、情報提供者を逮捕したということに、権力側の意図が見える気がした。私がかつて名誉毀損容疑で取調べを受けた際の構図と似ていると思ったからだ。
『噂の真相』への捜査の際、私や『噂の真相』関係者への取調べよりもずいぶんと早く、「情報提供者と思われる」人間が次々に聴取されていった。そして検察側にとって「都合のいいこと」を供述するように迫られた。それに反論すると、「お前は『噂の真相』の手先か」と怒鳴られた人間もいた。あまりに長時間の聴取で「仕事の約束がある」というと、待ち合わせの喫茶店に該当人物がいるか確認しようとまでした。
最初に周辺を固め、本丸(今回は草薙さんと版元の講談社)へと捜査を進める。
このことは情報提供者を萎縮させる効果もある。メディアへ情報提供や内部告発すれば、逮捕される危険性がある、という圧力ともとれる。さらにメディアに対する萎縮効果もあるだろう。筆者にとって、自分ではなく情報提供者が(草薙さんは情報源の秘匿としてこれを認めていないが)逮捕されるという事態は、言論の自由などという大上段な議論とは別の意味で大きなプレッシャーだと思う。
もうひとつ。今回の一件は裁判員制度導入にも関係してくることでもある。
今回逮捕された医師の容疑は、職業上知った内容を漏らしたというもの。だが裁判員制度が始まれば、裁判員に選出された一般市民にもこの義務が適用される。評議で知りえた事実を漏らしてはいけないという守秘義務が課せられる。それは裁判が終わった後も続き、罰則規定もある。ということは裁判員経験者は、例え裁判において不正があったり、また職業裁判官の問題点などについての告発なども不可能になるのだ。もちろんメディアで発言してはいけない。
今回の逮捕は、この裁判員制をも視野に入れたものに違いない。「権力側に都合の悪いことを話したら逮捕だ!」と。
とここまで書いたら女王様がぶつくさ言い始めた。
「もしテレビのレギュラーや美味しい仕事があっても裁判員を断れないの?」
「らしいよ」
「毎日テレビに出ている小倉(智昭)さんは?」
「ダメだろう」
「じゃあ、あたしは裁判員なんかなりたくない。あっ、そうだ。睡眠薬飲んでるので心身に障害があるっていうのは?」
「その程度じゃ無理じゃないの。でも私はやる。だって仕事を休めるんだよ」
「休ませない」
「会社はその義務があるらしい」
キーーーー!!!
そしてネットで何かを調べ始めた女王様。
「グフフフ。『会社は休みを与える義務はあるが、給与の支払い義務はない』って書いてあるよ。いいよ休んでも、でもその分給料から差っ引くから。あっ、でもカンバは犯罪者だから選ばれないよ、きっと」
ああーーーそうかも。