2008年03月17日
アジト
室井事務所からも程近い、旧『噂の真相』編集部に久々に行った。今年はじめ「内外タイムス」で『噂の真相』復活か!? という記事が出てから、前編集長だった岡留安則が「あんなこと書かれたから、腹いせに(?)事務所を一旦撤去する」と言い出し、引越し作業を手伝うことになったためだ。といっても、室井事務所スタッフでもあるさなえちゃんが陣頭指揮を執り、私はちょっと陣中見舞いに行っただけ。しかも、暇そうにしていたユウタを連れて。
歩いて5分ほどの距離のお散歩気分。
『噂の真相』事務所に入ると、ダンボールの山が積み上げられている。
「カンバ、ここは誰のアジト?」
ユウタが私に聞いた。
「えっ、なんでアジトなんて言葉を知っているの?」
「なんとなく」
でもその言葉がピッタリな感じだ。ナイス、ユウタくん。
引越し中だからガラクタだらけだったけど、ユウタはめずらしそうに周りを眺める。しばらく遊んでいると、さなえちゃんがおもちゃを見つけてきた。
「ユウタ、これあげる」
見るとピストルの水鉄砲だ。
「何でそんなものがあるの?」
「さあ、岡留さんの私物じゃないですか。鳥でも狙って遊んでいたのかも。でもいらないみたいだからユウタにあげる」
そういってさなえちゃんはユウタにピストルを渡した。
「あっ、なんか水が入っている。バンバン! サナエ~、覚悟~」
「あれ? 水がでない」
しばらくは何も起こらなかった。さらに3回ほど水鉄砲を打つユウタ。
プシュ。プシュ。
「あっ、出た」
うん?
なんだか変。
その場にいたさなえちゃんや、さなえちゃんの友達2人も変な顔をしている。
「目が痛い」
ユウタとさなえちゃんが同時につぶやいた。ほのかに異臭もする。
「ゲッ、やばい。みんな逃げろ!」
私とさなえ友達が叫ぶ。
ユウタとさなえは咳き込みはじめた。みんなで逃げるように外に出る。ゼエゼエいいながら。
「うへー、やば。思い出した。あれ、涙流スプレーだ」
今さらながら気付いたがもう遅い。確か、『噂の真相』編集部が右翼に襲撃された際、護身用として涙流スプレーとスタンガンを買った。それが無造作に置き去られていたのだ。胸のあたりも変な感じ。
とりあえず、みんなで近くの喫茶店に避難し、ユウタの目を洗い、うがいをさせた。
「あれはね、悪い奴に襲われた時に、相手をやっつけるスプレーなんだ。あとは昔、警察が学生運動の学生に向けて発射したりしてた。だから、たぶん体に悪いものじゃない」
私はユウタに説明した。
「ふーん。ちょっと目が痛いけど大丈夫。面白かったね、アジト。また連れてって。でもさなえちゃん酷いよね。ボクになんとかスプレーなんかくれてさっ!」
でも、そのスプレーのすぐ先にはさなえちゃんがいて、だから一番症状が酷いのもさなえちゃんだったーー。
ユウタにとっては冒険のようなものだったのだろう。妙に興奮し、はしゃいでいる。
が、大人4人はPTSDのような症状になり、しばらく編集部に戻る気になれない。
<続く>