2007年05月29日
金と息子とおっぱいパブと
5月28日 記
「貯金、おろして欲しいんだけど」
いつになく神妙な顔をし、息子がいった。
息子は意外と金持ちだ。
方々からいただいたお年玉だけで八万円も持っている。
子供に、大金持たせちゃいかんでしょ。
だから、あたしと秘書の神林とでやつを説得し、銀行で通帳を作って貯金をさせることにした。
本人は自分の貯金箱(宝物)に入れておきたかったみたいなんだけね。で、毎日、数えたかったみたいなんだけど……。
うちの息子はお金が好きだ。
一回、五十円でスニーカー洗いや風呂掃除などなど、お手伝いを請け負って貯めたお金を毎日眺めている。
お手伝いの発注が少ないときは、自分の売り込みまでしたりする。
そうそう学童の先生からは、「ユウタくん、人生ゲームのお金の計算が大好きなんです」なんていわれる始末。恥ずかしや~。
息子の名誉のためにいっておくが、やつは決してケチではない。男のケチって大嫌い。そういう育て方はしていない。
昨日だってお祭りへいって、射的に夢中になり、必死こいてためた千五百円をみんな使ってしまったくらいだ。
その昔も、家の近くに住む大好きな女の子に、買ったばかりの自転車をあげてしまったっけ(親経由で返品されましたが)。ケチってわけじゃないだろう。
でもさ、金に対する想いははんぱじゃないな。
家へ来る客に唐突に、
「五百円くれよぉ」
なんて甘え声でいってみたりする。
大抵は「なにいってんの」と笑われて終わりだが、たまにあげる人もいるからさ。
五百円という微妙な金額の提示、ニヤニヤしながら冗談ですませようとする感覚。「けっこう賢い男だ」と思ってしまうあたしは親バカなのだろうか。
ま、そうなんだろうな。
「貯金、おろして欲しいんだけど」と息子にいわれ、「なんに使うの」と訊いてみたが、息子は理由をいうのを躊躇った。
それでもしつこく何度も何度も訊ねたら、息子はこうつぶやいたではないか。
「おっぱいパブというところにいってみたい」
六歳児でおっぱいパブという言葉を知っているなんて! ……やるなぁ。
「おまえ、おっぱいパブってどういうところか知ってんの」
あたしは訊ねた。息子は両手を前に突き出し、恥ずかしそうな顔をして十本の指をぐにぐにと動かした。
どういうところか……知ってやがる。やるなぁ。
とても驚いたが、母たるものこんなことで動揺していかん。ナメられる。
あたしは冷静を装っていった。
「おっぱいパブには子供は入れないんだよ」
「大人と一緒でも?」
「そうだ」
「じゃあ、大人になったら絶対にいく。絶対だ」
「そんなにおっぱいパブが好きなら、おっぱいパブのお店のオーナーになればいい。そしたら、毎日ただでお店にいけるしさ。毎日お店にいけるどころか、綺麗でおっぱいの大きなお姉さんをいっぱい連れて社員旅行にもいける。……でもなぁ、オーナーになるのはちょっと難しいかなぁ。一生懸命勉強して東大に入らなきゃならないから」
「東大?」
「頭の良い子が入る学校の名前だね」
「なんで、おっぱいパブのお店のオーナーは東大なんだ?」
「だっておまえ、そうなんだもん。一生懸命勉強しないと入れないよ、東大は」
苦しい説明だったか。
けど、相手は子供だからな。しょせん六歳児だから。
てかさ、誰だよ、あたしの宝物である息子に『おっぱいパブ』なんて余計なことを教えたの。
殺すぞ!